港区立高輪いきいきプラザ

2025.11.21

  • ニュース

アルツハイマー病とリチウム

 

「アルツハイマー病による認知機能低下にリチウムは有効か?~既存の承認薬である炭酸リチウムには効果を認めず~」と題したプレスリリースを発表したのは、藤田医科大学医学部精神神経科学講座らの研究グループです。具体的には、アルツハイマー病の認知機能障害に対するリチウムの有用性を、系統的レビューとメタ解析を用いて検討。その結果、「現在医薬品として承認されている炭酸リチウムには、アルツハイマー病による認知機能障害の進行を抑制する効果がないことが明らかになった」と述べています。当プレスリリースによると、「動物実験においては、現在医薬品として承認されていないオロチン酸リチウムのアルツハイマー病に対する有用性が示唆されていることから、今後ヒトを対象にしたオロチン酸リチウムのアルツハイマー病に対する臨床試験が実施されるかもしれません。オロチン酸リチウムは、日本だけでなく海外においても医薬品としては未承認であることに留意してください」ということです。因みに、リチウムは双極症(躁状態と鬱状態を繰り返す精神疾患)の治療に使われる薬剤で、日本では、炭酸リチウムが医薬品として承認されているそうです。ところで、今回の研究の背景には次のような説明がなされています。少し長くなりますが、そのまま引用します。すなわち、「現在、アルツハイマー病には非薬物治療や抗認知症薬などを用いた薬物治療が行われることが一般的です。しかし、いずれの治療方法に関しても認知機能障害の進行抑制作用や認知症周辺症状に対する有効性は認められるもの、その効果の大きさは限定的であるため、これらの症状に対する新たな治療方法の開発が精神科医療の喫緊の課題でした。最近、マウスを用いた動物実験では、内因性リチウム(体内で自然に存在するリチウム)の欠乏が、アルツハイマー病に類似した病態を引き起こすことが明らかになりました。具体的には、リチウムが欠乏することで、アミロイドβやリン酸化タウの蓄積、神経炎症、シナプス・軸索の喪失が増加し、GSK3βの活性化を介して認知機能の低下が進行することが判明しました。また、同じモデルマウスにリチウムを補給したところ、これらの病理学的変化と記憶喪失が予防されました。これまで、アルツハイマー病に対するリチウムの有用性を検証するためのヒトを対象にした臨床試験は複数実施されてきましたが、その結果は一貫していませんでした」ということです。

アルツハイマー病による認知機能低下にリチウムは有効か?~既存の承認薬である炭酸リチウムには効果を認めず~ | 藤田医科大学

 画像はプレスリリースから引用させて頂きました。

SM

一覧へ戻る

カテゴリ
年月で絞り込む