2025.11.21
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敗血症の原因に新たな発見
新型コロナウイルスのパンデミックが起こったときに、社会問題としてよく取り上げられた「敗血症」。この敗血症は、細菌などの病原微生物に感染し、体がその微生物に対抗することで起こるさまざまな状態のことで、全身性炎症反応症候群ともいわれているそうです。因みに、敗血症の原因となる感染症は、肺の急性感染症である「肺炎」と「尿路感染症」などであり、そのほかに「腸管感染症」や「血流感染症」などがあるとか。これまで、全身炎症を抑制する治療法が試みられてきましたが、予後の改善には至らず、未だに根本的治療法が確立されていないのが現状だそうです。そこで、横浜市立大学医学部救急医学の研究グループは、「コクサッキーアデノウイルス受容体(CXADR)」に着目。これは、元来ウイルス受容体として発見されましたが、その後の研究により細胞接着分子として作用することが明らかになったといいます。特に、ストレス時の臓器恒常性や臓器炎症において重要な役割を果たしているそうです。本研究グループは「CXADRは敗血症臓器障害の重要な制御分子である」という仮説を立てました。そして、「全身あるいは内皮細胞選択的にCXADR遺伝子を欠損させたマウスにエンドトキシンを全身投与し、生体内でのCXADRの役割を検討。この結果、CXADRは、エンドトキシンによる不全心臓において発現が亢進し、炎症促進および炎症抑制の二重の役割を果たしていることが示された」そうです。加えて、内皮細胞特異的欠損では、全身欠損とは対照的に主な炎症惹起分子であるp38の活性が抑制されることも分かったといいます。本研究により、「細胞起源に応じたCXADRによる多様なp38活性制御は、敗血症に伴う局所臓器炎症の新たな制御機序であり、特に血管内皮細胞に発現するCXADRは、心不全やショックを伴った重症敗血症の新たな治療標的分子の候補となることが示された」と結んでいます。
重症敗血症の原因に新たな鍵治療標的となる分子コクサッキーアデノウイルス受容体を発見 | YCU Research Portal
SM
エンドトキシン:細菌の外膜にあるリポ多糖体の一部です。細菌が死んだり壊れたりすると、このエンドトキシンが体の中に放出されることがあります。体はそれを異物として感知し、免疫系を作動させます。

