2025.08.13
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2種の細菌による新たながん治療
「T細胞やB細胞などの主要な免疫細胞に依存せずにがん細胞を攻撃する、新しいがん治療へのアプローチ「AUN(阿吽)」を開発した」と発表したのは、北陸先端科学技術大学院大学物質化学フロンティア研究領域らの研究グループです。この「AUN(阿吽)」というのは、2種類の細菌がまるで"阿吽の呼吸"のように精緻に連携しながら、がん細胞を選択的に攻撃するという新たな治療へのアプローチのため、この名がつけられたといいます。互いに異なる機能を持つ2種の細菌が、それぞれの役割を果たしながら、抗腫瘍効果を示すことが確認されたそうです。具体的には、「がん特有の環境に誘導されて、両細菌はマウス皮下腫瘍モデルにおいて腫瘍の血管やがん細胞を選択的に破壊。これにより、正常組織への影響を最小限に抑えつつ、がん組織だけを効果的に抑制する可能性が示唆された」と述べています。加えて、がんが産生する特異的な代謝物の存在下で、片方の細菌は線維状の構造へと変化。この形態変化により抗腫瘍効果が一段と強化されることが判明。興味深いのは、経時的に両細菌の集団構成も動的に変化し、最適な役割分担が自然に形成される点だといいます。さらに、病原性を抑制しながら、重篤な副作用の原因となるサイトカインストームの発生も回避できる可能性があるそうです。因みに、サイトカインストームとは、「体がウイルスや細菌などに反応して免疫物質(サイトカイン)を大量に放出しすぎることで起こる、過剰な免疫反応のこと。この反応が強すぎると、自分自身の体の組織を傷つけてしまい、重い症状や臓器不全を引き起こすことがあります。本研究グループは、「2種の細菌の持つ自然な"協調戦略"を巧みに活用することで、安全かつ効果的ながん治療の新たな道を拓くものです。今後、このメカニズムを応用した新しいがん治療法の社会実装に向けて、スタートアップ創業を計画しています」と結んでいます。
2種の細菌による新たながん治療へのアプローチ「AUN(阿吽)」を開発 ―免疫不全状態でも機能が期待されるがん治療に向けて― | JAIST 北陸先端科学技術大学院大学
画像はプレスリリースから引用させて頂きました。
SM