2025.08.06
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慢性腎臓病とラクトフェリン
腎臓の働きが徐々に低下していく進行性の慢性腎臓病(CKD)。日本では成人のおよそ5人に1人が罹患しているとされる深刻な健康問題だそうです。特に高齢の慢性腎臓病患者ではサルコペニアを合併している割合が高く、死亡リスクや生活の質 (QOL)の低下にもつながると言われています。そこで、東北大学大学院薬学研究科臨床薬学分野らの研究グループは、「ラクトフェリンが慢性腎臓病の進行と筋の衰えを抑制する」と発表しました。このラクトフェリンは、母乳や涙、唾液に含まれるタンパク質で、体を守るさまざまな働きを持つ多機能な栄養成分だそうです。加えて、「ラクトフェリンは腸内環境を改善する作用を介して腎臓および筋肉に良い影響を及ぼすことが明らかになった」とも述べています。ただ、なぜ慢性腎臓病でサルコペニアが起こるのか、「その詳しい仕組みはいまだ明らかになっておらず、有効な予防法や治療法も確立されていない」との事です。本研究では、慢性腎臓病モデルマウスを用いて、ラクトフェリンの「予防効果」(腎障害の進行を抑える)と「治療効果」(すでに進行した障害への効果)の両面を評価したそうです。その結果、「 腎臓病のマウスでは、腎機能の低下とともに腎機能の指標となる血液中尿素窒素や血液中クレアチニン濃度が上昇しますが、ラクトフェリンを投与することで、これらの指標の上昇を約50%抑えることができた」そうです。本研究グループは、「今後の研究を通じて、より高い効果を備えた予防・治療薬の 開発を進めることで、CKDおよびサルコペニアに対する新たな対策となり、国 民の健康リスクを軽減し、健康寿命の延伸にも貢献することが期待される」と結んでいます。
SM