2025.08.06
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ゾンビ細胞が鉄で死なない仕組みって何?
正常な細胞に比べて死ににくいゾンビ細胞として知られている「老化細胞」。その老化細胞は、鉄による細胞死が起こりにくいことが知られていますが、そのメカニズムはよく分かっていなかったのだそうです。そこで、がん研究会がん研究所細胞老化研究部らの研究グループは、老化細胞が正常な細胞と比較して死ににくい原因は、「細胞小器官の一つであり、主に細胞内の不要物などの分解を担う『リソソーム』の機能不全であることを発見した」と発表しました。老化細胞のリソソームを酸性化させると、リソソーム内に滞留している鉄がリソソーム外に分布するようになり、フェロトーシス(細胞死)に対する感受性が回復することを示したそうです。本研究グループによると、「膵臓がん細胞も老化細胞と同様のリソソーム機能異常を示すことから、リソソームを酸性化させる薬剤によって膵臓がんの発症や進行を抑えられることが分かりました。これにより、リソソームの酸性度を制御することが新しいがん治療の戦略として期待されます」と述べています。正常な細胞がさまざまなストレスを受けた結果として生じる老化細胞は、慢性的な炎症環境をつくることで、がんを含む加齢性疾患の発症や進行を促進することが知られていますが、今回の研究結果によって、リソソームの酸性度を制御することが、がんを含む加齢関連疾患の新たな治療戦略となる可能性が示唆されたことは大変有意義であると言えるでしょう。
老化した細胞が鉄で死なない仕組みを解明―リソソームの酸性度が細胞死の鍵を握る― | 東京大学 先端科学技術研究センター
画像はプレスリリースから引用させて頂きました。
SM