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2025.07.30

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血液検査でサルコペニアの発症予測

数年後にサルコペニアと診断される可能性がある人を調べるために、血液中の代謝物(生体指標)を使うことができないか検討を行ったのは、東京都健康長寿医療センター研究所自立促進と精神保健研究チームです。「サルコペニアを発症した高齢女性(平均年齢72歳)では、血液中の「2-アミノアジピン酸」の濃度が低く、アラニンとロイシンの濃度が高くなっていた」と発表しました。加えて、これらの血液中代謝物は、サルコペニアの発症を予測するために活用できる可能性があると述べています。サルコペニアは、進行すると寝たきりや介護が必要な状態につながります。したがって、その予防は、高齢化が進む日本において、健康寿命の延伸や社会全体の健康づくりに極めて重要であるとの観点から、本研究チームは、サルコペニアの発症予測に活用できる血液中の代謝物(バイオマーカー)がないかを調査したというわけです。実際、参加した高齢女性425名のうち、2017年時点ではサルコペニアではなかったものの、5年後の2022年の健診でサルコペニアと判定された37名は「サルコペニア発症群」として認識されました。因みに、サルコペニアは、「骨格筋量が少ない」「握力が弱い」「歩行速度が遅い」の基準で診断されますが、今回の研究では、先の「サルコペニア発症群」の方々と2017年時点で年齢や体格、既往歴などがほぼ同じだった別の37人を選び、こちらを「対照群(サルコペニア非発症群)」としたそうです。そして、2つのグループについて、2017年の健診時に採取した血液中のさまざまな代謝物の量を網羅的に比較したところ、次のことが判明しました。サルコペニアを発症した「症例群」では、発症しなかった「対照群」と比べて、「2-アミノアジピン酸」の血中濃度が低くなっていた。②アラニンとロイシンの濃度は高い傾向が見られた。因みに、アラニンとロイシンは、アミノ酸と呼ばれる、筋肉の合成や分解に深く関わる物質です。また、「2-アミノアジピン酸」は、たんぱく質の分解を抑える働きに関与しているとか。さて、本研究の結果として、「その濃度が低いということは、たんぱく質(つまり筋肉)が分解されやすい状態にある可能性を示唆している」と述べています。一方、アラニンとロイシンは、筋肉を作る「材料」として使われるアミノ酸。「これらの濃度が高いということは、筋肉を作るための材料自体は体内に十分にあるものの、それがうまく使われていない、筋肉が合成されにくい状態にある可能性が考えられる」とも述べています。本研究グループは、「数年後にサルコペニアを発症する可能性が高い人を、症状がまだ現れていない段階で血液検査によって予測できる可能性が見えてきた」と述べ、「今後知見を重ねることで、数年後にサルコペニアを発症する可能性が高い人を、症状がまだ現れていない段階で血液検査によって予測できるだろう」と結んでいます。

<プレスリリース>サルコペニア発症に関連する血液中代謝物(生体指標)を特定:2-アミノアジピン酸の低下は、将来の握力低下の一因となる可能性がある|研究成果|地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所

画像はプレスリリースから引用させていただきました。

SM

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