港区立高輪いきいきプラザ

2025.07.11

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「社会参加しないと損するかも」?

「行動経済学」「医療現場の行動経済学」など多くの著書がある行動経済学の第一人者大竹文雄氏によれば、人間の行動の特性を理解し、自由な選択によって、よりよい意思決定、より良い行動を引き出すための知恵と工夫が「ナッジ」なのだそうです。このナッジの手法を用いて、「高齢者の社会参加意欲を高める効果的なメッセージを検証した」と発表したのは、東京都健康長寿医療センター研究所の研究チームです。高齢期の健康長寿を支える柱として「社会参加」が注目されていますが、「きっかけがない」「時間がない」「人間関係が面倒」などの理由で、多くの高齢者が活動参加への第一歩を踏み出せずにいる点を指摘しています。そこで、本研究チームは、行動経済学に基づく「ナッジ」に着目。健診(検診)受診や食生活の改善といった望ましい健康行動を促す手法として効果が示されていますが、今回は、ナッジの手法の一つである「メッセージフレーミング」(情報の見せ方の工夫)を応用し、「どのようなメッセージが高齢者の社会参加活動を促すのか」を観察研究によって明らかにしたと述べています。その結果、「社会参加活動をしないと、あなたにとって損である」といった「損失に訴求したメッセージ」が、特に社会参加の経験がない高齢者の態度や意欲を高める可能性があることが分かったそうです。具体的には、65歳以上の高齢者1,524人を対象に実施し(対象者の中で、社会参加活動を行っている者といない者は半数づつ)、そこで、4つのグループにランダムに割り振り、以下に示す社会参加活動に関する異なるメッセージを読んでもらった上で、参加への態度や意欲を尋ねました。

個人利得メッセージ(あなたが社会参加活動をすることで、やりたい事が継続でき、自己負担の医療介護費が抑制される)

個人損失メッセージ(あなたが社会参加活動をしなければ、やりたい事を諦めることになり、自己負担の医療介護費が高くつく)

地域利得メッセージ(あなたが社会参加活動をすることで、地区に住む人同士のつながりや絆が強まり、皆が元気に安心して住み続けられる)

対照群(メッセージなし)

さて、その結果ですが、注目すべきは、社会参加活動を行っていない者に関する分析では、3つのメッセージのうち、個人損失メッセージ群は対照群に比べ、社会参加活動への関心:1.96社会参加活動の開始意向:1.74社会参加活動への印象:1.56倍と高い結果がでました。一方で、すでに社会参加活動をしている人に対しては、どのメッセージも大きな違いはなかったとか。本研究は、「社会参加を促すにはどのようなメッセージが効果的か」との問いかけに、エビデンスをもって答えた国内初の大規模研究であったと述べています。特筆すべきは、社会参加活動をしていない人に対しては、「参加しないことのリスク(=損失)」を強調したメッセージが、関心や行動意欲の向上に有効であることを示した点です。本研究チームは、「社会参加しないと損するかも」そんな一言が、高齢者の心を動かす鍵になるかもしれないと結んでいます。

<プレスリリース>高齢者の社会参加を促すには「得より損」:ナッジを活用したメッセージで社会参加活動の関心が2倍に|研究成果|地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所

画像はプレスリリースから引用させていただきました。

SM

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