2025.07.09
細分化された「○〇フレイル」で本当にいいの?
「あなたはオーラルフレイルで、さらに社会的フレイルと認知的フレイルの状態ですが、身体的にはフレイルではありません」こんな説明が、将来医療機関で行われるかもしれないと論じるのは東京都健康長寿医療センター研究所らの研究チームです。「〇〇フレイル」といったフレイルの細分化に対する懸念点をまとめ、国際雑誌「Journal of the American Medical Directors Association」に寄稿したそうです。ご存じのように、「フレイル」とは、「加齢に伴い生理的な予備能力が低下し、心身に問題が起きた際の抵抗力が低くなる状態を示している」のですが、これは、半健康に位置しているため、その予防・改善が健康寿命の延伸において重要である、ということです。ただ、世界保健機関の提言により、個々の機能低下に着目するのではなく、包括的な視点でフレイルを捉えることが重要であるという認識が広まりつつあるようです。この考え方は、当研究所の提唱する「体力・栄養・社会参加」という健康長寿を支える三本柱とも一致しているとか。近年、よく目にするのは「オーラルフレイル」、「社会的フレイル(ソーシャルフレイル)」、「認知的フレイル(コグニティブフレイル)」、「メンタルフレイル」、「アイフレイル」、「ヒアリングフレイル」など、フレイルのさまざまな側面を用語として表現している点です。当研究グループは、これらの細分化されたフレイルは健康状態を包括的に捉えて予防・改善を図るという従来のフレイルの概念とは異なり、個々の症状・機能低下そのものがフレイルであるといった誤解を招く恐れがある、と警鐘を鳴らしています。例えば、「ソーシャルフレイル」という用語ですが、主に一人暮らしのケースや社会経済的地位の低さ(学歴や所得の低さ)が診断基準に含まれることが多いとか。ただ、これらを「フレイル」という言葉で安易に捉えると、「意図せず偏見を助長する可能性がある」と本研究では述べています。では、どう捉えるべきなのか。本研究グループは、「こうした健康の社会的決定要因は、フレイルそのものではなく、フレイルを促進・抑制する社会的な要因として捉えるべきである」と指摘しています。ともあれ、高齢者の場合、「複数の健康課題が相互に影響し合うため、フレイルを特定の機能の単一的な問題として扱うのではなく、その複雑で多面的な性質を考慮した、総合的なアプローチが求められるべきである」とも述べています。つまり、結論として細分化されたフレイルはあくまでもフレイルの一側面として捉え、複数の健康課題が相互に影響し合うことを念頭において、その機能低下の予防普及啓発が重要と考えるべきである、と本研究グループは結んでいます。
<プレスリリース>「〇〇フレイル」はどのように扱われるべきか? ―フレイルの細分化に対する懸念点を米国医学雑誌に寄稿―|研究成果|地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所
画像はプレスリリースから引用させて頂きました。
SM
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