2024.12.23
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高齢者の社会的孤立と幸福ホルモン「オキシトシン」
「一人暮らしをする65歳以上の高齢世帯の割合は増え続け、2050年に32道府県で20%を超える見通しとなった」と報じたのは11月12日付の朝日新聞の記事。特に大都市圏で大きく増えるそうです。そこで、医療体制の整備が喫緊の課題となっていますが、高齢者が家族と食事を共にすることも重要なテーマです。ある調査会社のアンケート調査結果によると、一日の全ての食事を一人で食べる頻度について、「ほとんど毎日」と回答した人の割合は全体の11.0%。「週に4~5日ある」(4.3%)と合わせると、週の半分以上、一日の全ての食事を一人で食べている「孤食」の人は全体の約15%も占めていて、増加傾向にあるとか。さて前置きはそれくらいにして、慶應義塾大学医学部内科学教室(循環器)、先端医科学研究所(脳科学)、および自治医科大学らの共同グループは、「社会的孤独が脳視床下部でのオキシトシン分泌を減少させ、肝臓における脂質代謝異常を招くことで動脈硬化を促進させる新たな分子機序を発見した」と発表しました。今まで、「社会的孤独はヒトにおいて脂質代謝異常や動脈硬化を原因とする虚血性心血管疾患のリスクであることが報告されていた」そうですが、その詳細は明らかになっていなかったとか。今回、本研究では、「社会性のあるマウスでも特に“絆”が深いとされる同胞マウスに限定して実験を行い、社会的孤独ストレスの影響を臓器横断的に検証」したそうです。その結果、「これまで推定されていた食事摂取量や体重の増加、交感神経系、視床下部-下垂体-副腎皮質系および炎症の活性化とは無関係に、社会的孤独ストレスが動脈硬化を進行させることを見出した」と述べています。一方、“幸福ホルモン”として社交性や感情の制御、乳汁分泌、子宮収縮などに関与していることが知られている「オキシトシン」を経口補充することで、「社会的孤独による脂質代謝異常と動脈硬化が抑制されることを確認した」そうです。本研究グループは、今回の研究によって、「オキシトシンの新たな機能だけでなく、オキシトシンが脳と肝臓を結ぶ重要な鍵分子であることも明らかとなった」と述べ、「オキシトシンが、特に社会的孤独による動脈硬化進展に対する新たな治療標的として期待されるのみならず、社会的つながりや“絆”が動脈硬化の原因となる脂質異常症の予防に重要であることが改めて強く示唆された」と結んでいます。
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2024/12/16/28-163965/
画像はプレスリリースから引用させていただきました。高輪いきいきプラザ SM