2024.12.18
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腸脳相関って何?
ヒトの腸内には1000以上の菌種、約100兆個の菌体が存在するそうです。その様子をお花畑などに例えて「腸内フローラ」や「腸内菌叢(または腸内細菌叢)」とも呼ばれているとか。「腸内菌」は腸内に生息している菌のことですが、その「腸内菌」が、「脳で新しく生まれる神経細胞を正常に発達させるキープレイヤーである」と発表したのは、国立研究開発法人 産業技術総合研究所バイオメディカル研究部門 及び東京大学大学院農学生命科学研究科 らの研究グループです。本研究では「腸内菌叢の存在が大人の脳で新しく作られた神経細胞の正常な発達に必要であることを発見した」と述べています。加えて、「3種類のプロバイオティクスの摂取によって、成体神経新生において腸内菌叢が担っている役割を補えることと、神経細胞を作り出す神経幹細胞の数を通常飼育下のマウスよりも増やせることも発見した」そうです。因みに、成体神経新生とは、成体の脳で新しい神経細胞(ニューロン)が作られる現象のことです。ご存じのように、海馬という脳の領域で新しく作られた神経細胞は、記憶や学習だけでなく、感情のコントロールにも関わるとされています。そのため、成体神経新生の異常が、アルツハイマー病や統合失調症、うつ病などの精神疾患の原因や進行に影響している可能性が指摘されているとか。海馬の成体神経新生は、運動や食事、ストレスなどの外部環境に大きく影響されるのですが、最近の研究では、腸内に存在する菌叢(腸内菌叢)が腸と脳をつなぐ「腸脳相関」を通じて、成体神経新生に影響を与えることが明らかになっています。ただ、今まで腸内菌叢がどのような仕組みで成体神経新生を調節しているかについては、まだ完全には解明されていなかったという事です。今回の研究では、ヒト由来の神経幹細胞の長期培養技術と、マウスの成体脳に存在する神経幹細胞の動態を明らかにする組織解析技術を組み合わせた技術の融合により、腸内菌叢の存在が正常な成体神経新生を促す重要な鍵であり、いわゆる「キープレイヤー」として働く可能性があることを見いだしたと結んでいます。
腸内菌が脳に果たす新たな役割を発見――腸内菌は脳で新しく生まれる神経細胞を正常に発達させるキープレイヤー―― | 東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部