2024.11.15
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「機能性ディスペプシア」と胃の不調
日本消化器病学会が発行している「機能性ディスペプシア」のガイドブックによると、この聞き慣れないディスペプシアとは、胃の痛みやもたれなどの不快な腹部の症状を指す医学用語だそうです。胃カメラ検査をしても、胃の中に異常は見られず、綺麗な状態でも「胃が痛い」「胃がもたれる」などという「ディスペプシア症状」が現れるのはなぜでしょうか。実は、胃の消化作用や収縮運動、さらに感じ方など、胃のはたらき(機能)が悪くなったことが症状の原因ではないか、ということです。こうした考えから「機能性ディスペプシア」(英語表 記functional dyspepsia の 頭 文 字 をとって「 FD」)という病 名 が 生まれたそうです。繰り返しになりますが、明らかな異常が無くても、慢性的にみぞおちの痛みや胃もたれなどの症状が現れるのです。因みに、当ガイドブックによると、「健康診断では受診者のうち11~17% に 、一 方 、病 院 に 上腹部の症状でかかった人では 45~ 53%に FD が見つかる」といわれています。これらの数値から見ても、FD がとてもありふれた症状であることが分かります。さて、原因ですが、胃・十二指腸運動が障害された場合、胃からの排出の異常と胃適応性弛緩の異常があるそうです。また、胃・十二指腸の知覚過敏が生じている場合に対しても知覚過敏となって症状が出ることがあるとか。 加えて、 胃酸が原因となる場合。 胃から分泌された酸が胃や十二指腸の粘膜を刺激して、胃や十二指腸の運動や知覚 に影響を与えるケースです。あるいは、遺伝的要因もあります。このほかにも、 感染性胃腸炎にかかった人もこの症状が出ることがあるそうです。もちろん、喫煙、不眠、食習慣の乱れなどの生活習慣、 早食いなどのかたよった食習慣から生じることは多々あるようです。ともあれ、この機能性ディスペプシアの病 態はとても複雑。因みに、ピロリ菌もFDの原因の1つです。例えば、ピロリ菌の除菌治療 を行った後、半 年 あ るい は 1年経って FDの 症 状 が 良くなった場 合 には 、ピ ロリ菌 が FD の原因だったと考えるのが一般的のようです。最後に、治療ですが、まずは胃酸が出るのを抑える薬の服用でしょうか。それでも改善しない場合は、抗不安薬・抗うつ薬や胃の動きをよくする薬、また漢方薬が 使われます。当ガイドブックによると、「抗 不 安 薬 や 抗うつ薬を飲むことで不安や抑うつが改善し、それに伴って胃の調子もよくなる可能性がある」とか。また、胃の動きをよくするお薬や、漢方薬の服用も効果があると指摘しています。それでも改善が見られないときは、心療内科で心理的なトレーニングなどの治療を受けるケースもあるとか。ただ、残念ながら、FDは、治療して症状がなくなった後でも、数ヵ月のあいだに5人に1人くらいが再発すると言われていますから、まずは日々の生活習慣を見直し、ストレスをためずに、気長にこの「症状」と付き合っていくしか方法はないのかもしれません。
日本消化器病学会発行のガイドブック
画像は日本消化器病学会のHPより引用させて頂きました。高輪いきいきプラザ SM