2024.11.08
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アミロイドβ線維の成長メカニズムを解明
記憶や認知機能の低下を引き起こすアルツハイマー病。その原因の一つは、脳内で異常に蓄積されるアミロイドβ(Aβ)というタンパク質だということが分かっています。このAβが積み重なって「線維」と呼ばれる塊を形成し、これが神経細胞に悪影響を及ぼすのだそうです。従って、Aβ線維の成長を阻止することが、アルツハイマー病の治療において重要であることは間違いありません。ただ、その成長過程や停止メカニズムはこれまで詳しくわかっていなかったそうです。そこで、自然科学研究機構生命創成探究センター/分子科学研究所らの研究グループは、「最先端技術である高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)を用いて、Aβ線維がどのように成長するのかを分子レベルでリアルタイムに観察した」そうです。その結果、「1本のAβ線維が2本のプロトフィラメントから構成され、Aβ分子が交互に結合することで線維が伸びていくことが明らかになった」と述べています。さらに、2本のプロトフィラメントの先端が揃う「整列状態」では、線維の成長が一時的に停止する「停止状態」が頻繁に発生することも確認されたとか。この停止状態は、Aβ線維の成長過程において自然に生じる重要なステップだと言います。加えて、「4396Cという特異的な抗体が、この停止状態にある線維の先端に選択的に結合し、線維のさらなる伸長を効果的に阻止することも分かった」そうです。これにより、Aβ線維の成長が完全に停止し、進行を抑制するメカニズムが明らかになりました。つまり、本研究により、「Aβ線維の成長が『交互伸長と停止』を繰り返す独自のメカニズムが判明した」という訳です。本研究グループは、「アルツハイマー病の進行に関与する新しい要素を解明したものであり、特にAβ線維の停止状態に着目した治療法の開発につながる可能性を示している」と述べています。今後の研究では「4396C抗体の作用メカニズムをさらに詳しく解明することで、Aβ線維の成長を抑える新たな治療法の実現が期待でき、また、今回の成果を基に、他のアミロイド性疾患への応用も視野に入れたさらなる研究を進めたい」と結んでいます。
停止状態を狙え!アミロイドβ線維の成長メカニズムを解明し、アルツハイマー病の進行を阻止する新たな手がかり(加藤晃一グループら) - お知らせ | 分子科学研究所
画像はプレスリリースから引用させていただきました。高輪いきいきプラザ SM