2024.10.16
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「放射性リガンド療法」って何?
がんの放射線治療というと、従来の放射線、陽子線、重粒子線がありますが、近年注目されているのが、「放射性リガンド療法」です。この治療法は、体の外から照射するのではなく、放射線を放出する物質『放射性同位元素』(RI)を含む薬を放射性医薬品というのだそうですが、この放射性医薬品を静脈注射などで投与すると血液を通ってがん細胞に到達・結合。そこで、放出される放射線でがんの画像診断を行ったり、がん細胞の増殖をピンポイントで抑えて治療を行うというものです。ただ、従来の核医学がん画像診断・がん治療では、投与された放射性医薬品が、がん病巣以外の健常組織にも集積してしまうという大きな問題があったそうです。国立がん研究センターのプレスリリース(2023年10月17日)によると、「薬は血流にのって体内を回りながらがん病巣に集まるため、がん病巣以外の健常な組織にもRIが取り込まれてしまいます。特に、重要な臓器である肝臓などに集積してしまうと毒性に繋がることから、がんの診断や選択的治療の妨げとなっていました」とのこと。つまり、「非がん組織への集積を最小限に抑えることが極めて重要」なのです。本研究では、「この難しい2課題の両立を達成すべく、核医学で用いるRIの大半が金属イオンであることを巧みに利用し、核医学などを組み合わせた独自の手法を開発した」と述べています。少し専門的な話になってしまいますが、日刊ゲンダイの健康ページで、近畿大学医学部放射線医学教室の細野眞教授はわかりやすく放射性医薬品について説明しています。「放射性医薬品ががん細胞に到達するのは、もちろん偶然ではない。「A」というがんがあるとすると、「がんA」に集まる特定の化合物がある。その化合物を人工的に作り(がん標的分子「リガンド」)、キレート剤という低分子薬剤によって、放射性同位元素と強固に結合させる。つまり、リガンドと放射性同位元素(&キレート剤)で成り立つ薬が、放射性リガンド療法で用いられる放射性医薬品(放射性リガンド)となる。「がんA」には「リガンドA」を、「がんB」には「リガンドB」を、というようにリガンドを変化させれば、さまざまな種類のがんに対応できる可能性がある」(日刊ゲンダイの記事より引用)ということだそうです。国立がん研究センターの研究グループは、「今後は、健常臓器への分布を避けるだけではなく、分布してしまった薬を迅速に排出させ、がん病巣には薬を留めるという新たな発想で薬剤開発を進めることで、これまでになかったがん病巣だけに留まる薬の開発が期待されます」と述べています。
健常組織を守りつつがん病巣に的確に放射性医薬品を集中させる新手法を開発|国立がん研究センター (ncc.go.jp)
新がん治療で注目「放射性リガンド療法」の威力…細胞の内外から放射線を照射|日刊ゲンダイDIGITAL (nikkan-gendai.com)
画像はHPより引用させて頂きました。高輪いきいきプラザ SM