2024.09.18
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抗菌薬の乱用に注意!
「抗菌薬(抗生物質)の効かない薬剤耐性菌による死者は、2050年までの25年間、世界で3900万人を超えるとの推計を米ワシントン大などの国際チームが発表したそうです。9月17日付毎日新聞の記事に教えられました。ご存知のように、細菌は様々な方法を駆使して抗菌薬から生き延びようとします。その方法は色々とありますが、実に巧妙です。①自身を覆っている膜を変化させて薬の流入を防ぐ(外膜変化)。②細菌内に入ってきた毒を外に汲み出してしまう(排出ポンプ)。そして、③抗菌薬の作用点を変化させる(DNAやRNAの変異)。また、④化学反応で分解してしまう方法やバイオフィルムを形成するなどの方法があるとか。厚労省の「AMR」のHPにこのことが明記されています。ここで問題にしたいのは、人的な要因で耐性菌を増殖させてしまうこと。例えば、抗菌薬投与です。上述のHPによると、「薬剤耐性菌は耐性を得るため、本来の菌としての能力に何らかの代償を払っていることも多く、細菌叢の生存競争という意味では弱者であることも多いのです。しかし、そこに抗菌薬という選択圧が加わってしまうと、薬剤耐性菌以外の細菌が減少し、薬剤耐性菌が増殖しやすい環境ができあがる」というのです。ここで重要なのは、抗菌薬の「乱用」はかえって薬剤耐性を助長させてしまうという事です。つまり、「細菌は、本来もっている耐性のほか、遺伝子を拾ったり他の菌から譲り受けたりしながら高度な耐性を獲得し、そこに抗菌薬による選択圧が加わることで増殖し、ヒトからヒトへ、またはヒトから環境へと広がっていく」という薬剤耐性のメカニズムを理解せねばなりません。因みに、AMRの調査では、抗菌薬・抗生物質の正しい知識を持つ人の割合は低く、 「抗菌薬・抗生物質はウイルスには効かない」という正しい知識を持っている人は18.0% しかいませんでした。加えて、薬剤耐性対策への意識は不十分で、約8割の人が薬剤耐性菌に感染する、あるいはするかもしれないと思っていても、約6割の人は何も対策を取らないそうです。
耐性化のメカニズム | 薬剤耐性菌について | 医療従事者の方へ | かしこく治して、明日につなぐ~抗菌薬を上手に使ってAMR対策~ (ncgm.go.jp)
画像はHPより引用させて頂きました。SM