2024.08.29
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ドーパミンによるアミロイドβ分解機構の発見
2024/08/07付けで、理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター 神経老化制御研究チームから『ドーパミンによるアミロイドβ分解機構の発見』の成果発表がありました。
ドーパミンによるアミロイドβ分解機構の発見 | 理化学研究所 (riken.jp)
注)Aβ: アミロイドβ AD: アルツハイマー病 ADモデルマウス:AD病態を示す遺伝子改変マウス
要旨では、『ドーパミンがネプリライシンの活性制御因子であることを見いだしました。さらに、ドーパミンに暴露された神経細胞は、ネプリライシンを介して培地中のAβ量を低下させました。主に前頭前野におけるネプリライシンの発現が高まり、Aβ蓄積量の低下が認められました。』と報告されています。
マウス実験により、『加齢によって、前頭前野のドーパミン量が低下すること、また、それに伴って、ネプリライシンの発現も低下することが分かりました。』さらに、
『ADモデルマウスの前頭前野においてドーパミン量がさらに低下していること、また、ネプリライシンの発現量もさらに低下していることが明らかになりました。これらの変化は、他の脳領域では確認されなかったことから、前頭前野におけるドーパミンはADの病態形成に関与している可能性が示唆されました。』とあります。
筆者の理解で説明すると、「ネプリライシン(neprilysin)」とは体内に広く分布しているタンパク質分解酵素で、アミロイドβを分解する働きがある。またドーパミンとは「幸せホルモン」と呼ばれる神経伝達物質であり、そのドーパミンがネプリライシンを活性化することがわかった。そして、加齢による影響と、さらにはアルツハイマー病による影響により脳の前頭前野のドーパミンが低下してしまい、それによりネプリライシンも低下する。その結果アミロイドβの分解除去の働きが弱くなってしまうというメカニズムがわかったというのがこの報告の主旨となります。
さらにマウスへの実験で、『パーキンソン病の治療薬として使われている「レボドパ(L-dopa):ドーパミン前駆体」をADモデルマウスに投与し、ドーパミンのアミロイド病理に対する効果を検証しました。興味深いことに、レボドパを投与すると、主に前頭前野におけるネプリライシンの発現が高まり、Aβ蓄積量の低下が認められました』とあり、レカネマブなどの既存の薬より安価なアルツハイマー予防薬となり得る薬剤を発見できたことも報告されています。・・・おおいに期待したいものです。
高輪いきいきプラザ H.H.