2024.05.31
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脳梗塞の新たな治療
脳梗塞を根本的に治療する新たな研究を進めているのは、名古屋市立大学大学院医学研究科脳神経科学研究所の研究グループです。マウスの実験では、「生後のマウスの脳内において、新しく生まれた神経細胞(新生ニューロン)が集団で移動する際に、細胞と細胞の間に広い隙間を作りながら高速で移動していることを発見」したそうです。一方で、脳梗塞によって脳が傷害を受けた時には、この隙間を減少させるノイラミニダーゼという酵素が増えることで、 ニューロンが移動しにくくなってしまうことを見出した、とも述べています。そこで、「抗インフルエンザ薬として用いられているノイラミニダーゼの働きを抑える薬剤を投与することで、ニューロンが移動しやすくなり、傷害脳におけるニューロン再生や 機能回復が促進されたことが明らかになった」そうです。残念ながら、脳梗塞治療は急性期の治療以外には確立されていないとか。つまり、傷害によって失われたニューロンを根本的に再生させる方法は現在のところ確立されていないのです。「傷害を受けた脳では、神経幹細胞から産生された新生ニューロンの一部が、傷害部位へ移動し、ニューロン再生に貢献しますが、その移動効率は低く、脳機能回復には至らない」と述べています。本研究では、ノイラミニダーゼの働きを抑える抗インフルエンザ薬を投与することにより、新生ニューロンの移動およびニューロン再生が促進し、脳傷害によって失われた脳機能が回復することを明らかにしました。本研究グループは、「抗インフルエンザ薬を使って脳梗塞の根本的治療に成功した世界初の研究である」と結んでいます。