2024.05.01
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変幻自在な「今」という感覚
集団の中の個人とって、他の人たちと共有する「今」の長さの感覚は、集団が大きければ大きいほど増加することが分かった、と発表したのは筑波大学システム情報系及び長岡技術科学大学技学研究院 情報・経営システム系の共同研究グループです。その「今」という感覚ですが、集団のサイズや関わり方によって柔軟に変化するというのです。当プレスリリースによると、話し手の口の動き(視覚)と声(聴覚)を、同時に「今」起こっていると感じることができるのは、脳が、ある時間幅内で生じる異なるタイミングの情報を一つのイベントとして統合しているからだそうです。そして、このような時間幅を「Temporal Binding Window」(TBW、時間統合窓)と呼ぶのだそうです。本研究では、拍手という集団行動の中で、「今」の感覚(TBW)がどのように調整されるかを調べたそうです。具体的には、実験参加者にさまざまな条件下で人工的に生成された拍手音を提示し、「拍手が揃っているかどうか」を判断してもらったとか。その結果、拍手の人数(集団のサイズ)が増えるにつれて、TBWは対数的に増加したものの、TBWの曖昧さは人数の増加に影響されないことが明らかになったそうです。つまり、「参加者が集団内で能動的にバラバラな拍手音を統合して『今』を形成していることを強く示唆している」のだそうです。これらのことから、本研究グループは「音楽独特のグルーブ感や一体感のような、ヒトの時間感覚の柔軟性が支える集団特有のダイナミクスを明らかにすることが期待できる」と結んでいます。